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きき湯開発プロジェクト 第5回「”ブリケット”形状を完成させよ」
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 「きき湯」の香りを決定するために調香師の試行錯誤が続いた。湯けむりをイメージした「白い香り」を作り出すことに成功した頃、入浴剤の「形」を製品化する作業も続いていた。その形とは「ブリケット」と呼ばれるものであった。
新製品「きき湯」のコンセプトが揃い始めた
 きき湯のコンセプトとして「ミネラル」「泥土(でいど)」「炭酸ガス」がキーワードとして挙げられた。これらのキーワードを満たす成分が決定され、色や香りも膨大な試行錯誤の末にほぼ決まろうとしていた。
 同時に、当初からくり返し検討されていたのが、形状である。入浴剤の形状とは、たとえば、粉末か、顆粒か、錠剤かといったことである。ブリケットはそのどれとも違う独特の粒の形をしている。きき湯の製品コンセプトの一つは「湧き上がるような発泡」の実現であり、それを実現するためには、ブリケットの形状が最適であると種々の検討から結論が出た。なぜなら実現するには表面積を稼ぐ必要があるからだ。ブリケットは、錠剤よりは粒が小さいため、粒がたくさん集まることで錠剤と同じ重量でも表面積を稼ぐことができるのだ。試験の結果、検討した通りの湧きあがるような勢いのある発泡が実現できた。
 それにしても、入浴剤にブリケットを使うとはこれまでになかった発想である。ブリケットは凍結防止剤や肥料などでその形が使われることがあるが、入浴剤としては存在しなかった。しかし、ブリケットは入浴剤のアイデアとしてまったくなかったわけではなく、研究所ではその成形機械や材料なども幅広くストックされていた。それが「ミネラル」「泥土(でいど)」「炭酸ガス」というコンセプトと出会い、きき湯のブリケットが誕生したのである。
新製品「きき湯」のコンセプトが揃い始めた
 入浴剤の形状を担当する研究員には、他の部門の研究員とは少し違った苦労がある。
 形状は成分が決まった後で完成させなくてはならない。その成分を変えることはほとんど許されずに、成形を完成させなければならないのである。ブリケットを成形する事は困難であることはわかっていた。しかしブリケットでゴーサインが出ている以上、何とか成し遂げなければならない。
 形状担当のある研究員は言う。「ブリケットは、シンプルな形の錠剤とは違いますから、うまく固めることが非常に難しいんですね。圧縮成形を行なうんですが、それに適した『強度』というものがあるわけです。つまり粒の硬さや固まり具合です。粒のサイズも色々ですから、強度と大きさの兼ね合いも研究しなくてはなりません。強度・大きさ・発泡の勢い・生産性等々、折り合いを付ける事が多く、全てをクリアする事は難題でした」。
膨大な数の試作品
 
  ブリケットを成形するためには、表面に凹凸のある2本のロールの間で原料となる粉末を圧縮する。その圧力は20トンにもなる。圧縮された原料は、ちょうど板チョコのような形で出てくる。この板チョコのうすい部分を外すと、ブリケットの粒の部分が残るわけである。ところが、ロールでかみこんだ時の圧力と強度が適当でないとうまく成形できない。ロールにくっついてはがれなかったり、逆にはがれたもののボロボロとくずれてしまうのである。一度うまくいっても、ちょっと成分が変更になると、元に戻ってしまう。
  特に苦心したのは「マグネシウム炭酸湯」だった。何回も圧縮ロールへの付着が起こるのである。圧力と強度をくり返し検討して、ようやく付着が起こらないブリケットができあがった。ところが、このブリケットを浴槽へ入れてみると、発泡が水面で起こってしまう。発泡は、浴槽の中位あたりでなければ、コンセプトである湧き上がる発泡にならない。
 ようやく諸条件をクリアした先の担当者は言う。「他の部署の課題が次々に達成されていくなかで、私たち形状担当チームは、最後まで研究を行なっていてあせったものです。ちょうど中学校の頃に、与えられた課題ができあがらずに暗くなった教室に一人で居残っているような、あの感覚が思い出されて、夜の研究室で思わず苦笑し合いましたよ」。
 あせってもあきらめない粘りが、入浴剤初のブリケットを成功させた。
(次号に続く)
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