温泉メカニズム体験記「第2回 群馬県草津温泉」
往古より国中に知られた名湯で、明治初期にはドイツのベルツ博士によっても賞賛された草津温泉。近年は、泉質にこだわる温泉ファンからの支持も急増しているようだ。歴史ある温泉の今の姿を見てきた。
※写真:西の河原公園内にある、ベルツ博士の銅像

整備された湯畑からの湧出は今も毎分4千
湯畑遊歩道:遊歩道が整備された湯畑周辺は観光客の撮影ポイントに
湯畑遊歩道:
遊歩道が整備された湯畑周辺は観光客の撮影ポイントに

湯葉足湯:
湯畑の脇の足湯専用
「新湯けむり亭」

湯畑滝つぼ:
滝つぼは高温源泉の
迫力を感じる

畑の中にある「湯樋」は
強酸性に耐えられるよう、
樹脂の多い松を使用
 
 草津温泉街の中心には、大源泉「湯畑」がある。周囲は柵で囲まれ、遊歩道が整備されておりベンチや街路樹も配置されていて、まるで公園の池のようだ。だが、柵の中には湯気が立ち込め、硫黄を含んだ熱湯が湧き出し、木の樋を通り、滝つぼに落ちている。まさに草津のシンボルといえる光景だ。もちろん湯畑を中心に草津の町全体が硫黄のにおいに包まれていて、温泉情緒を盛り上げる。
 草津温泉の総湯量は毎分3万6千リットルで、湯畑からは自噴泉としては全国一、毎分4千リットル以上の湯が湧き出している。湯畑のまん中に置かれた木の樋は7本あり、長さ10メートルで、ここを通す間に源泉温度55℃を自然の冷気でさまし、各旅館やホテルなどへ送っている。草津には湯畑を含めて主な源泉が6つと、他にも無数の源泉があるため、すべての旅館・ホテル・温泉施設で、源泉をそのままひっきりなしに湯舟に注ぐ「掛け流し」をしているのが自慢のひとつでもある。水増し、湧かし直し、循環などは行っていないという。
一円玉を1週間で溶かす強酸性の湯がきく
 「恋の病以外なら何でも治す」と歌われてきた草津の湯。その主な効能は慢性婦人病から水虫まで確かに幅広い。泉質は、酸性・含硫黄−アルミニウム−硫酸塩・塩化物泉となっている。酸性かアルカリ性かをあらわすpHの値は、湯畑で2.08とかなり強い酸性だ。一円玉なら1週間で溶けてしまうという。
 実際に湯に入ってみると、確かに温度もやや高めで、硫黄分が濃いことも分かるが、もちろん肌に刺激などはない。
 さて、今回宿泊した「草津ホテル」はレトロな雰囲気の和風旅館。ここの露天風呂は、あずまや風の建物でゆったりと気持ちもなごむ。こうしたいい雰囲気のある露天風呂で、硫黄のにおいに包まれながら効果のある泉質を実感するのが、本物の温泉情緒といえるのではないか。
あずまや風のつくりの露天風呂は、すだれのかかった優雅な雰囲気がいい
あずまや風のつくりの露天風呂は、
すだれのかかった優雅な雰囲気がいい
(2点写真提供:草津ホテル)
(2点写真提供:草津ホテル)
草津ならではの「時間湯」は安全入浴のための知恵
熱の湯:「湯もみ」を見て体験もできる「熱の湯」
熱の湯:「湯もみ」を見て体験もできる
「熱の湯」
  草津には、高温で、強力な殺菌力のある湯の成分を活かすための入浴法として「湯長」の指示の元に集団で入浴する「時間湯」がある。
「ホテルヴィレッジ」に併設されているクアハウス「テルメテルメ」では時間湯の体験ができるというので、さっそく試してみた。
 まずは板で湯をかき回す「湯もみ」を行なう。草津節を湯長と一緒に3番まで歌いながら浴槽の湯をかき回す。
 これは一種のイベントなのかと思ったがそうではないという。湯もみをすることで入浴の準備運動にもなり、草津の湯に耐えられる体力があるのかをチェックするのだ。この湯もみが体力的にきついという人には入浴を断ることもあるという。それに、大きな声で歌うことで、湿った空気を深く吸い込んで気管の奥を潤す効果もある。
白旗の湯:18ある共同浴場のひとつ「白旗の湯」は24時間入浴できる
白旗の湯:
18ある共同浴場のひとつ
「白旗の湯」は24時間入浴できる
湯もみ:「時間湯」では、はじめに「湯長」と一緒に草津節を歌いながら湯もみをする
湯もみ:
「時間湯」では、はじめに「湯長」と一緒に
草津節を歌いながら湯もみをする
 湯もみが終わったら、頭から何度も入念に「かぶり湯」をして、高温浴の準備を整える。それからやっと湯につかる。みぞおちまでつかる半身浴から次第に肩まで入って、きっちり3分間で上がる。温泉の成分を体にしみこませるために、上がり湯はしない。その後は休憩室で20分ほどゆっくりと休む。これが1サイクルで、これを1日に4回繰り返すのが正式だという。 それにしても、湯に入っている時間が1回につきたったの3分間というのは意外な気がした。 しかし、入浴前の準備をしっかりとして、後にゆっくりと休憩をすると、確かに気分もリラックスする。せっかくの温泉だからといって、赤い顔をして何度も湯につかるよりは、はるかに気持ちが良い。
 薬は用量や使用法を守らなくてはいけないが、それと同様のことを求められる草津の湯は、何だかそれだけでも効能があるのがわかる気がした。
COLUMN
 もう20年も前にスキーをしがてら草津に泊まったが、その時は疲れ過ぎて倒れるように寝てしまったので温泉を充分には味わえなかった。今回あらためて湯につかってみて、「時間湯」という方法が編み出されるほどの泉質を文字どおり肌で感じた。あまりにも有名な温泉地だが、決して娯楽だけの町ではなく、あくまでも泉質にこだわっている雰囲気があって、本当の健康を温泉で求める時代の流れに、しっかりと合っているという印象を持った。
(取材:岩間靖典)
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