それぞれの近代的なホテルあるいは伝統と格式のある旅館の風呂は、どれも個性的な工夫が凝らしてあり、しかもセンス良くまとまっているようだ。そうした風呂の魅力と同時に、地元の人たちが愛用している外湯、つまり共同浴場に入浴するのも楽しい。
御夢想の湯、上の湯、河原の湯、山口露天風呂は、どれも入湯料は「志納」ということになっている。これは気持ちでどうぞということで、料金設定はない。山口露天風呂以外は午後3時で終了となり、この時間以降は地元の人専用となる。逆に言うと、朝9時から午後3時まではなるべく訪れた人たちにゆったりと使ってもらいたいという心づかいのあらわれだ。

河原の湯:
この小さな建物の中はほかほかと
温かい浴室だ |

広くはないが石造りの清潔でぜいたくな外湯 |
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街の中心、バスの折り返し地点のある荻橋の下の河原に、文字どおりの河原の湯がある。言われなければそれとはちょっと分からない建物だが、こぢんまりとしてきれいだ。入ってみることにする。タオルやせっけんなどは備わっていないということなので、近所の雑貨屋さんで買う。お店の人は「河原の湯へお入りですね。不思議と湯冷めをしないお湯で、よく温まりますよ」と言う。
男湯と女湯と左右に分かれた入口の手前側、男湯の扉を開けると、いきなり脱衣所になっていて服を脱いでいる男性がいる。4人も入るときゅうくつなくらいだ。すぐ向こうにガラス戸があり浴室がよく見える。中はそれほど広くはないが、湯気がこもって温かく秘密の洞窟に入ったようで楽しい。内装は美しい石造りでぜいたくな雰囲気だ。透明な湯がたっぷりと湯舟からあふれている。湯にはほとんど硫黄のにおいがない。湯につかると、なるほどすぐに体が温まる。出てまたつかる。3回くらいこれを繰り返すと本当に体が温まるのだが、熱い湯にがまんして入った時のような体が燃えるようなじっとりとした暑さではなく、何かやわらかく温まった気がした。
風呂から出ると、自然に自分の表情がゆるんできているのを感じながら、バスに乗って樹影の濃い山道を下った。 |