
温泉科学プロジェクトは温泉と入浴に関する情報を発信しています。
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| 天城山の西の麓から河津川に沿って伊豆半島の東南側の海岸まで広がる河津温泉郷。「伊豆の踊子」の舞台ともなったこの地には、名勝河津七滝の中でも勇壮な大滝を間近に見ながら入浴できる露天風呂がある。変化に富む自然の中で、ほど良い源泉温度の湯を体験した。 |
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※写真:
湯町の足湯。街中に足湯などがいくつも点在していて、湯量の多さを伺えた。
伊豆の天城という場所は、文人の創作意欲をかきたてる何かがあるのだろうか。
天城峠を舞台にした小説や映画は数多く見られるが、やはりその代表格といえば川端康成の「伊豆の踊り子」だ。
この天城周辺を舞台として描かれ 、大正15年に発表された川端初期の短編小説である。
南北の距離が50kmほどもある伊豆半島。付け根にある東海道の要所、三島から南端に近い下田まで行こうと思ったら、近道としては半島の中央を南北に走る下田街道をひたすら南下することになるが、なにしろ山が多い。富士火山帯に属する火山地帯だからだ。
その中でも大きな休火山の一つが天城山で、標高はこの山を成す2つの外輪山、万二郎岳が1325m、万三郎岳は1406mある。天城山そのものは、半島のやや東寄りにあり、もちろん街道はこの山の頂上を越えていくわけではない。大昔に、山を越える道を作る時には、できるだけ遠回りをせずに、しかも標高がなるべく低いところを目指す。そこが峠になるわけで、天城山の西の麓近くに、峠道が通されたのだろう。ここが天城峠だ。峠には、ほんの限られた道幅に、多くの人が古来から行き来をするから、物語りも生まれることだろう。
天城峠は標高800m、地図で見ると、まさに「伊豆の踊子」の書き出しにあるように、つづら折りの道を登って、峠に至る。そしてここに天城山隨道(ずいどう)、旧天城トンネルがある。もちろん現在、車で通るのは、1970年に完成した有料道路の天城トンネルだ。
三島から修善寺を経て、天城越えをすると、急な斜面を下るように渓谷が開けてくる。ここから河津温泉郷が始まる。

国道 414 号線に突如として現れる「河津七滝ループ橋」。
ここを通って下田へ抜ける。
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河津温泉郷は、峡谷を流れる河津川に沿って、海岸まで続く。距離にして10kmほどだから、周辺から支流を集めた河津川は、一気に海まで降りて行く感じだ。この川に沿って現在は国道414号線となった下田街道が、まだまだ素朴な雰囲気を所々に残しながら、ややおおまかなつづら折りを峡谷に通している。 河津の上流域の名勝は、河津七滝(かわづななだる)という場所で、勢い良く下る渓流に 7つの滝が形成されている。
上流から釜滝、えび滝、へび滝などと名前があり、一番下に大滝(おおだる)がある。七滝の一帯は七滝温泉と呼ばれ、そのすぐ下流に隣接して大滝(おおだる)温泉がある。この温泉名の違いは、源泉の違いによるものらしい。大滝温泉からさらに下れば、やや離れて湯ケ野温泉、峰温泉、谷津温泉、そして海辺の河津浜温泉へと続く。
河津七滝の景観は、急流が玄武岩を削ることによってできているようだ。玄武岩は火山岩の一種で、なめらかな感じの薄い灰色をしている。はるかな昔に、天城山から噴出した溶岩が固まったものなのだろう。

河津温泉郷付近を流れる河津川の渓谷。
火山岩の一種玄武岩を削りながら流れ落ちる。 |

大滝温泉の宿「天城荘」。 「河津七滝」の一つ
「大滝」はこの旅館の敷地内にある。 |

内風呂としてある「 5 つの薬草風呂」は、
それぞれが個室のようになっている。 |

赤い色をしている「アロマローズ」の風呂。
心地良い香りも入浴で心が休まる効果の一つ。
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黄緑色の「アロマカモミール」の風呂。 個室のドアを閉めて入ると、 これはこれでリラックス。
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大滝温泉にある旅館「天城荘」で温泉を体験した。天城荘は、28種類もの風呂があることと、大滝を間近に見ながら入浴できる露天風呂があることで知られている。大滝のあるあたりの河津川が天城荘の敷地内を流れているからだ。
天城荘は、5本の自家源泉を持っていて合計の湧出量は毎分620Lあるという。泉質は、アルカリ性の単純温泉で、神経痛、筋肉痛、関節痛、慢性消化器病、冷え性、疲労回復などが適応症となっている。うれしいのは、源泉の泉温が38〜49℃とやや低いので、冷却のための加水をすることなく利用できることだ。
まず屋内の大浴場に入る。ここでおもしろいのは「薬草風呂」。個室になっている5つの風呂に、それぞれ植物の成分が入っていて、気持ちの良い色と香りに包まれてゆったりと入浴できる。
そして、露天風呂。峡谷の一画がそのまま全部温泉巡りの場となっていて、遊歩道を歩きながら、これらを回るには、すべての風呂に入る一般コースのほかに、短縮コースというものまで勧められているくらい広大なだ。これらは男女混浴で、時間によって散策をする一般の人もいるので、水着で入るよう勧められている。崖の上や中腹には「見晴しの湯」や、七滝の名をそれぞれに冠した「五右衛門風呂」があり、下の方には洞窟の奥深くにある「秘湯穴風呂」や本格的なプールが温泉水で満たされている「25m温泉プール」などがある。
河津川に沿っては、いくつか大小の「河原の湯」が並ぶ。早朝の人の少ない時間に、大滝をすぐ目の前に見る河原の湯に入ってみた。切れ目なく流れ落ちて、水煙を上げる文字どおりの大滝を見ながら、体を湯にゆっくりと沈める。熱過ぎず刺激がなく入りやすい。湯は無色透明で、においも味もなく、さらさらとやわらかい。しばらく浸かっているうちに、湯と滝つぼがつながっているかのような錯覚を感じた。

渓流の河津川沿いに順路があり、
天城荘のさまざなま露天風呂を巡ることができる。 |

渓谷の斜面には、 7 つの滝の名前を冠した
五右衛門風呂が並ぶ。どっぷり浸かって温まる。
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温泉水を満たした温泉プールは、本格的な長さ
25m 。ちょっと不思議な光景だ。 |

水煙を上げる大滝とこの瀑布を間近に見る 露天風呂「河原の湯」。
五感が大自然の力で満たされるようだ。
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南からの玄関口は、伊豆半島の東側の海に 面した伊豆急行線の「河津駅」。 |
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下田街道は、途中で別れて、一つはそのまま海へ抜けて河津の駅へ至る。一つはさらに南の下田へ至る。下田は昔から漁港として栄えていたそうだし、ペリーをはじめ幕末には外国船が何度か寄港しているそうだから、人の行き来もひんぱんだったことだろう。そこで、国内の西からも東からも、下田へは東海道の三島あたりから街道を南下するわけで、古来から天城越えは多くの旅人の記憶に残った場所であったと思う。火山国である日本は、その自然が変化に富むゆえに、往来には難所も多い。しかし一方で、火山国ゆえに温泉という癒しの場所もこれまた多い。下田街道を南下する人は、天城越えをして温泉に入り、北上する人は一風呂浴びて、天城峠に挑む。旅人への天と地のごほうびのようだ。 |
| (取材:岩間靖典) |
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